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食育と栄養学

正しい知識でこれからの毎日を楽しく #:177 2013.10.08更新 <監修: 医学博士 長野美根>

隠し味の秘密とは?

隠し味~ということばをよく耳にします。料理を基本の味付けで仕上げたところに他の調味料などを少量加えて、おいしさをアップさせるのが目的です。目立たないプラスαで、味付けを強調したり、風味をプラスしたり、味わいにアクセントをつけることなどが役割です。つまりこの隠し味のワザしだいで、料理の出来ばえに大きな差がつくというもの。ふだん何気なく目にしているレシピにも、いろいろな隠し味が文字通り~隠れているのです。
 煮物にみりんや酒を加えて香りや風味、照りなどを出すのも隠し味のひとつなのですが、すでに普通に行われています。それではおしるこやスイカに塩を加えるのはなぜでしょうか? 隠し味のメカニズムをあらためて探ってみましょう。

味の相互効果は大きく4つに分けられます

隠し味による相互効果の主なものには、「対比効果」「抑制効果」「相乗効果」「変調効果」の4つがあります。1つめの「対比効果」とは、たとえば甘味や塩味など味覚を刺激する2種の味があるとき、片方の味でもう一方の味を強めるように変える作用のこと。塩の塩辛さでスイカの甘さを引き出したり、おしるこや甘酒に塩を加えて、甘さを強調させる効果です。おしるこの場合には甘味が増すうえ、味全体が引き締まる効果もあります。この「対比効果」は、甘味と塩味の関係だけでなく、うま味と塩味の間にもおこります。だし汁だけではうま味が弱いのに、少量の塩を加えると断然うま味が生きてきます。このように塩には「対比効果」を起こしやすい性質があり、昔から「隠し塩」としてさまざまな料理に用いられてきました。「対比効果」の条件は、一方の味があくまで主役であり、これに対して隠し味の味はごく少量であることです。
 この「対比効果」とは逆に、一方または両方の味が弱められるのが、2つめの「抑制効果」です。例えば、苦いコーヒーに砂糖を加えて苦味をやわらげたり、酸っぱい夏みかんに砂糖をかけて甘くする効果です。このように砂糖には一般的に苦味や酸味などをやわらげ、抑える働きがあります。また塩にも酸の強い刺激を抑える働きがあり、酢に塩を少量加えることで、ツンとくる刺激が弱められ、寿司酢や酢の物もおいしくなるのも、この「抑制効果」なのです。
 3つめの「相乗効果」は、いちばん身近な例として、昆布と鰹節を合わせてとっただし汁があげられます。それぞれにもうま味成分が含まれているのですが、合わせることにより複雑なうま味が増強されるというわけです。最後に4つめの「変調効果」。これは食塩水を飲んでから水を飲むと甘く感じるように、2種の違う味を続けて味わうと、一方の味が変化することです。

隠し味のワザで食卓に変化を

隠し味のワザで食卓に変化を

上にあげた塩や砂糖などによる相互効果や、混合効果、変調効果以外にも、「隠し味」のフィールドは広く、さまざまな「隠し味」のテクニックや活躍する「味」があります。
 例えばいつも飲むお味噌汁。ショウガ汁をたらして風味を出せば味噌が少なくても風味が出て減塩になります。コクが欲しいときは、ゴマ油を一滴たらすか、にんにくのすりおろしを入れるのもおすすめです。
 それぞれの家庭に必ずあるこだわりは、カレーの隠し味ですね。リンゴとハチミツは有名ですが、ヨーグルトやココア、ウスターソースやしょうゆなど、我が家ならではの秘伝があるようです。こうした隠し味に決まった方程式はありません。それぞれの好みに合わせながら少しずつ試行錯誤を繰り返して育てていくものなのでしょう。とはいえ、全ての料理に共通する隠し味は、「美味しく食べてもらいたい」という一生懸命な気持ちに尽きるのかもしれません。