\食育と栄養学/

食育と栄養学

正しい知識でこれからの毎日を楽しく #:220 2016.07.12更新 <監修: 医学博士 長野美根>

落としぶたはなぜ必要なの?

料理レシピに「落としぶたをして」とあったら、鍋の直径よりも一回り小さいふたを用意して、材料の上に直接のせましょう。こうして煮ると鍋の中の空間が少なくなり、狭い範囲で熱が対流するので、エネルギー効率が上がります。さらに煮立った汁が材料にまんべんなくまわるので、むらなく味がつきます。

なかでも煮魚の調理に落としぶたは欠かせません。魚は煮汁に味や栄養分が流出するのを最小限にするため、少なめの煮汁で味をつけます。魚に十分味がついたころに煮汁がほとんどなくなっているくらいがベストなのです。しかしただ煮汁を少なくするだけだと、煮汁に浸かっている魚の下部分には味がしみますが、煮汁から出ている上部分にはよく味がつきません。とはいえ鍋を大きくゆすったり、途中で魚をひっくり返したりするとせっかくの魚の身がくずれてしまいます。そんなとき落としぶたをすると、沸騰した煮汁がふたに当たって循環し、魚の上にも煮汁がかかるので、少ない煮汁でも全体に味がゆきわたるのです。
また落としぶたには、材料を動かないように押さえて、煮くずれを防ぐ役割もあります。またおでんや含め煮などのように、多めの煮汁で煮る場合は、材料の浮き上がりをふせいで、味をしみ込ませる役目もします。

落としぶたのいろいろと使い分けは?

このように材料を煮汁に沈めたり、煮くずれを防ぐためには、ある程度重さのある木製や、薄手の金属製のものなどが適しています。鍋の内径に合わせてサイズを変えられるステンレス製のものや、あつかいの楽なシリコン製のものなども出回っています。
木製の落としぶたは、最初に水で濡らしてから使うと匂いがつきにくくなります。魚専用のものを1枚決めておくとよいでしょう。煮汁が少ない場合、味をむらなくしみ込ませるのが目的ならば、表面を加工してあるクッキングシートなどが便利。蒸気が抜けるように穴を開けて落としぶたにしましょう。やわらかな紙は材料の形に沿うので、野菜の煮物や表面にしわのよりやすい豆などをふっくらと煮上げるときに活躍します。また表面の乾燥を防いだり、アクを吸収する働きもします。
身近なものではアルミ箔も、臭いがついてもそのつど捨てられるうえ大きさも調節しやすいので、煮魚や肉豆腐など、毎日のおかず作りには重宝します。

真ん中に蒸気の抜ける穴を開け、少ししわをよせて使うと浮き上がりにくくなります。煮汁の蒸発を防ぐため、落としぶたのうえにさらにふつうのふたをして煮る場合もあります。この上ぶたのことは「きせぶた」と呼ばれます。和風の煮物をおいしく作ることができれば、食卓が一気にグレードアップしますね。落としぶたの役割と使い方を知って、煮物をふっくら味よく仕上げてください。


参考資料
『料理のなんでも小事典』日本調理科学会編 (講談社)
『基本の家庭料理・和食篇』婦人之友社編 (婦人之友社)