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歴史と雑学

果物と野菜に関するなるほどがいっぱい #:116 2011.03.22更新 <監修: 医学博士 長野美根>

包丁対決! 和 vs 洋 vs 中

包丁には、和・洋・中の調理に合わせて、和包丁、洋包丁、中国包丁があります。材料を切るという同じ用途を持つにもかかわらず、それぞれの形や種類、使い方は実に個性的。そこには長い歴史のなかで形づくられてきた調理法や食習慣が、さまざまに反映されています。食文化と“切っても切れない”関係にある、和・洋・中の包丁の秘密に迫ってみましょう。

和包丁

和包丁

四方を海に囲まれ、海の幸に恵まれた日本では、魚を調理するための包丁の種類が多いのが特徴です。「出刃包丁」は、重くて太い刃で魚のかたい頭や骨を切り、鋭い切っ先で身をさばきます。「刺身包丁」は魚の身の組織をつぶさないように一気に手前に引き切りするため、刃が細長くなっています。関西の刺身包丁は先端が尖っているので、その形から「柳刃」と呼ばれ、関東のものは先端は尖っておらず、「蛸引(たこひき)」といいます。そのほか、ふぐなどを薄造りにするための「ふぐ引包丁」、鰻専用の「鰻裂包丁」などがあるのも、日本ならではの多様さでしょう。野菜の皮をむいたり、切るためには、刃が薄い「薄刃包丁」や「菜切り包丁」などが伝統的に使われてきました。薄い刃は大根のかつらむきや、繊細な野菜の飾り切りにも適しています。

洋包丁

洋包丁

西洋で広く使われているのが「牛刀」です。日本へは洋風の肉料理とともに取り入れられたので「牛刀」と呼ばれましたが、尖った刃先と薄めの刃は、肉、魚、野菜など素材を問わずに使えます。日本伝統の和包丁と大きく違うのは、和包丁が刃の片方を削った片刃がほとんどであるのに対し、洋包丁は刃先が刃の中心にある両刃であることです。現在、日本の家庭で最も使われている「三徳包丁」も、もともと「牛刀」を日本向きにアレンジしたもの。家庭でも洋食が作られるようになった戦後、肉、魚、野菜の3つの調理ができるという意味で「三徳包丁」「万能包丁」「文化包丁」などと呼ばれて普及しました。これも日本ならではの和洋折衷の食文化が生んだ調理器具だといえるでしょう。
 西洋では、このほかパンやチーズを切るための包丁や、テーブル上で料理を切り分けるサービス用のナイフが充実しているのも特徴。食習慣が調理道具の発達に結びついていることがよくわかります。

中国包丁

中国包丁

中国包丁の特徴は、なによりも幅広く重い刃です。これは、和包丁や洋包丁が主に引いたり、押して切るのに対して、中国では、叩くように切ったり、刃を横にして押しつぶすといった用途に使われることが多いためです。例えば、骨つきの肉を叩き切るには、ある程度重いほうがよく切れます。また、幅広い刃はにんにくやしょうがなどの香味野菜をつぶすのに便利です。基本的に形は同じで、一本で肉の骨切りから野菜の皮むきまでこなせますが、肉には厚い刃、野菜には薄い刃と使い分けることもあります。
 中国の包丁使いと深い関係があるのが、中国独特の木をそのまま輪切りにした丸くて厚いまな板です。骨つきの肉などを叩き切るには、まな板も跳ね上がらないくらいに重く、丈夫でなくてはいけません。また、まな板の傷みも早く、表面を削りながら使うため、ある程度の厚みも必要だというわけです。中国料理は種類も調理法もバリエーション豊かですが、実はこんなシンプルな道具から生み出されていたのです。