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歴史と雑学

果物と野菜に関するなるほどがいっぱい #:145 2012.06.05更新 <監修: 医学博士 長野美根>

昭和の台所道具を見直す

 今や、まな板や洗いおけを持たない家が珍しくないといわれています。単身者や核家族がふえるなか、また電動の便利な調理器具の普及などにともなって、台所から姿を消してしまった道具も多いのでしょう。でも日本の食文化を支えてきた昔ながらの和の道具たちには、実用の点からも理にかなったものや、便利なものがとても多いのです。
 これからお話する「和の台所道具」は、果たしてあなたのキッチンにはありますか。もしなかったとしても、その機能性をよく知ったなら、きっと欲しくなるはずです。

器にも使える情緒豊かな「盆ざる」を見直そう

器にも使える情緒豊かな「盆ざる」を見直そう

盆ざるとは、竹をお盆のように平らに編んだざるのことです。竹素材の柔らかな感触や、細かく編み込まれた目の細かさは、見た目にも美しいもの。最近ではプラスチック製や金属製のざるに存在をとって変わられつつあるのが残念です。しかしこの盆ざる、実はとても働き者なのです。
 一番に強調したい利点は食材に優しいこと。たとえば盆ざるの上に魚をおいて塩をふり、しばらくおくと余分な水分が落ちて身がほどよく締まり、不思議と美味しくなります。水切れがよいうえ、竹の細かな繊維が水分を適度に吸収するからです。盆ざるは水でさっとぬらしてから使うと、食材の臭いがつきにくくなります。
 このように下ごしらえはもちろん、器にしても重宝します。枝豆やとうもろこしをたっぷりゆでて大きな盆ざるに盛り合わせたり、家族で食べるおそばを盛りつけても、情緒のある器として大活躍。ちょっとくたびれてきたら、ベランダの干し野菜作りに使えば、通気性のよさで野菜がほどよく干し上がります。大、中、小とそろえておけば、意外に出番の多い和の台所道具のひとつです。

お寿司好きファミリーなら、一家に一台「飯台」を!

お寿司好きファミリーなら、一家に一台「飯台」を!

収納場所の事情もあってか、この「飯台」もキッチンから消えつつある道具。しかしお寿司が大好きな家庭なら、ぜひ一家に一台は欲しいところです。それは、パラリとした美味しいすし飯を作るときの強力な助っ人だからです。飯台にあけた熱いご飯に合わせ酢をまわし、うちわであおぎながら混ぜていくと…。酢とご飯の湯気、木の香りが混ざり合って台所に立ち込め、とても幸せな気分になりますね。炊き立てのご飯の余分な水分を木地に吸わせ、同時にすし飯に粘りが出ないように切るように混ぜましょう。うちわであおいで一気に冷ますことで艶のある、パラリとしたすし飯に仕上がります。この一連の作業は、ご飯を広げられないボウルなどのなかではうまく出来ません。
 また飯台があれば、ちらし寿司や五目寿司、手こね寿司など、そのまま器にして盛りつけ、食卓にのせられます。家族での手巻き寿司パーティーも、飯台のすし飯を中心に据えれば、雰囲気も上々ですよ。

「巻きす」を使いこなせば、料理があか抜けます。

「巻きす」を使いこなせば、料理があか抜けます。

細く割った竹を糸で編んだ調理用のすだれのことを「巻きす」と言います。これを使うのは海苔巻きぐらい…とあなどってはいませんか? 巻きすには、海苔巻き以外にもいろいろと使い道があるのです。まずはほうれん草などの青菜を茹でたあとの水切りです。巻きすで巻いたら縦にして、上から下へとしぼりましょう。青菜の葉や茎がつぶれず、しっかりと水気をしぼれるので、美味しいお浸しが食べられます。同じく水切りですが、大根おろしを巻きすの中央にのせ、両端からはさむようにして余分な水気を切ります。実はこれ、しぼり具合の調節もしやすいし、盛りつけも美しくできるという板前さんのワザなんです。
 よく知られているのは、だし巻き卵の仕上げです。だし巻き卵を焼いたら、熱いうちに巻きすで巻き、そのまま冷ましましょう。表面に美しい波模様のある形のよい卵巻きになります。これの応用としてオーブンで焼いたミートローフなどを熱いうちに巻きすで巻いて冷ませば、形が美しく整いますよ。


昭和の台所には必ずあった、こうした台所道具。ちょっと視点を変えれば、出番はまだまだたくさんあるはずです。流行の便利グッズに目をうばわれる前に、温故知新の心で、もう一度見直してみませんか。