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歴史と雑学

果物と野菜に関するなるほどがいっぱい #:131 2011.11.01更新 <監修: 医学博士 長野美根>

知って味わう話題のブランド豚肉

豚肉は安価で栄養価も高く、毎日のおかず作りの強い味方です。ところが最近は消費者の高級志向に応え、さまざまな「ブランド豚」が話題にのぼることが多くなりました。品種や血統へのこだわりはもちろんですが、それ以上に飼料や運動など飼育環境にも工夫がなされ、それぞれに個性ある味わいが注目されています。今回はそうしたブランド豚のなかでも、最近人気が高く、長い歴史と伝統を持つスペインの「イベリコ豚」、日本代表として沖縄の「アグー豚」、そして中国が世界に誇る「金華豚」を紹介します。

イベリア半島に野生していたイベリコ豚

イベリア半島に野生していたイベリコ豚

イベリコ豚は、5000年も前からイベリア半島に生息していた野生の豚が起源とされ、古代ローマの文献にも登場します。古くから保存食としてハムに加工されるなど、戦争に明け暮れたローマの兵士たちの食料にもなっていました。現在はスペイン西部地方でのみ飼育されています。ユニークなのはその飼育法です。一定の年齢になるとコルクや樫などの自然林で野生に近い状態で放し飼いにされ、そこでドングリを食べて育ちます。そのため、植物性油であるオレイン酸が豊富で、脂身もすっきりとした上品な味わいです。適度に運動しているので、肉質も筋繊維に脂肪が入り込んで、みごとな霜降り状になっています。
 現在は純血種のイベリコ豚の血が50~75%以上入った豚をイベリコ豚として出荷していて、放し飼いの期間やドングリを食べた量などでランク付けされています。ドングリの実だけで育った最高ランクのイベリコ豚は、「イベリコ・デ・ベジョータ」(ベジョータはドングリの意味)と呼ばれます。最高級のイベリコ豚を味わいたい方は、ぜひ「ベジョータ(bellota)」の表示を確認してください。

アグー豚は沖縄の健康を支える在来豚

アグー豚は、14世紀に中国から沖縄に導入され、「島豚」として飼育されてきました。日本では奈良時代に伝わった仏教の影響で肉食を嫌う傾向が強かったのですが、沖縄では中国の儒教文化の影響が濃く、儒教の祭礼では豚肉が供されていました。そのこともあって、沖縄では、豚の耳から足の先、内臓までをむだなく食べきる文化が発展したのです。
 ただし、アグー豚は小型で出産頭数も少なかったため、戦後に大型で生産性の高い西洋種が導入されると激減してしまいます。西洋種との交配も進み、一時は種の消滅の危機に陥りました。そこで、30年ほど前に沖縄でアグー豚復活の取り組みがスタート。全県を調査して約30頭のアグー豚を見つけ出し、純粋なアグー豚に戻すための「戻し交配」が10年かけて行われたのです。再び市場に出回るようになると、その霜降りの多さや、うまみのある肉質がたちまち話題になり、バイオ技術のおかげで、現代人も「島豚」の伝統の味を味わえるようになりました。

高級ハムを作るために作られた「金華豚」

高級ハムを作るために作られた「金華豚」

金華豚の原産地は中国浙江省の金華地区。主に高級ハム「金華火腿」を作るために古くから育てられてきました。胴は白く、頭とおしりだけが黒いので、両端が「烏(黒い)」という意味で、「両烏豚」とも呼ばれます。コクと香りのある肉質が特徴で、余分な脂肪がつかないように、飼料は穀物ではなく茶殻や白菜を発酵させたものを与えるのが伝統的な飼育法です。
 金華豚を使った金華ハムは、イタリアのプロシュートやスペインのハモンセラーノと並ぶ世界三大ハムの一つです。中国では9~10世紀の唐の時代にはすでに豚の塩漬けの記録があり、12世紀頃には南宋の名将として知られた宗将軍が、兵糧として金華でハムを作らせたとの記録が残っています。その後金華ハムは、「色」「香り」「味」「形」の4つが絶品である「四絶」と絶賛され、数々の万国博覧会で食品部門の1等に輝くなど、そのおいしさはお墨付きです。
 日本では金華豚のよさを生かして改良した品種が飼育されています。中国では現在も主に金華ハムに加工されますが、日本ではハムに限らず、レストランメニューにも登場するなどさまざまな料理で楽しまれ、古くて新しいブランド豚として人気です。