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歴史と雑学

果物と野菜に関するなるほどがいっぱい #:153 2012.10.02更新 <監修: 医学博士 長野美根>

スローフード「おでん」の魅力

 ♪冬の夜は、おでん、燗酒、鍋焼きうどん~~と歌にもあるように、湯気の立つおでん鍋を積んだ屋台の赤い灯は、なんとも郷愁をそそるものです。江戸庶民にも、辻売りや屋台などですっかりファストフードとして定着していたおでん。現代ではコンビニストアがそれに変わっています。
 「なんで今頃おでんの話なの?」と思われるかもしれませんが、コンビニおでんの商戦はもう始まっています。なんと季節の変わり目である10月が、おでんの最大のかき入れどきなのだそうです。猛暑が続き、冷たいものに疲れを感じた胃に、秋の気配とともに食べる温かなおでんは、体に優しく感じるのでしょう。今年もそれぞれのコンビニでは、地域性を生かした品揃えや、薬味の工夫などに知恵をしぼっているようです。

おでんの語源は「田楽」から

今でこそ、色々なおでんだねを鍋で煮て食べるのが一般的ですが、元祖は豆腐を串に刺して味噌をつけて焼いた「田楽」です。室町時代からすでにあったというこの料理は、田植えのとき、一本の竹馬に両足をのせてピョンピョン跳ねながら舞った「田楽舞」に、その形が似ていることから田楽と呼ばれました。
 やがて御所で使われた女房ことばが広がり、田楽は「おでん」と呼ばれるようになります。つまり当初のおでんは主に豆腐のことをさしていました。江戸の料理書である「豆腐百珍」には、いろいろな味つけの豆腐田楽のことが記載されています。木の芽田楽、みたらし田楽、なんばん田楽、うに田楽などのように、さまざまなものが考案され流行しました。きっと当時の料理人の苦労も、現在の商品開発につながるものがあったことでしょう。
 その後、江戸の中ごろには、こんにゃくや里芋を竹串に刺してゆで、みそをつけて食べる「煮込み田楽」が広まりました。幕末になると、だし汁としょうゆで煮込んだ「おでん」が登場し、明治初年に上演された河竹黙阿彌の芝居に「煮込みおでん」が登場します。一方、上方に煮込みおでんの店が誕生したのは江戸末期。関東風のおでんが「関東焚き」として大阪に普及したのは、関東大震災以後だとも言われます。このようにして、おでん食文化は徐々に全国に広がり、スローフードとして定着していきました。

今年の「おうちおでん」は野菜を主役に

今年の「おうちおでん」は野菜を主役に

おでんの缶詰や、自動販売機まで登場するほど日本人はおでん好き。こんにゃくや玉子、煮汁のしみたさつま揚げやちくわ、ぷっくりとふくれたはんぺんなど、好みのたねを盛り合わせて食べるのもわくわくします。野菜系の定番としては、大根や里芋、ロールキャベツあたりが王道です。
 おでんメニューで主婦が気になることといえば、野菜不足になりがちなこと、彩りが少ないことです。そこで今年のおでんには、野菜をもっとたくさん入れて作ってみませんか。おでんに練り製品は欠かせませんが、この練り物のうま味がしみた野菜類はとてもおいしくなります。トマトやパプリカは彩りを添えますし、エリンギやシメジも味がしみておいしいもの。
 特におすすめは芽キャベツとブロッコリー。固めに下ゆでしたものを2~3個ずつ串に刺して煮込みましょう。だしのうま味をよく吸って、おいしいおでんになります。
 魚のタンパク質に加えて野菜のビタミンもとれる「野菜おでん」をぜひお試しください。