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健康

からだによいこと、つづけて元気に #:139 2012.03.06更新 <監修: 医学博士 長野美根>

野菜の苦味を楽しもう

たらの芽やふきのとう、菜の花などの春野菜は、ほろ苦さが魅力です。日本では古くから「春は苦味を盛れ」といわれ、その独特な風味が楽しまれてきました。春に限らず、例えば苦瓜はまさに苦味が最大の特徴であり、モロヘイヤやほうれん草、ピーマンなどにも苦味成分が多く含まれています。こうした苦味成分は、それぞれの野菜ならではのおいしさのもとになるだけでなく、健康によい働きもあるとされています。マイナスに思われがちな苦味ですが、いったいどんな役割があるのでしょうか。

苦味の良さは経験によって知る「大人の味覚」

人の味覚は、甘味、塩味、うま味、酸味、苦味の5つが基本になっています。これらの味覚は、人が必要な栄養を摂るために、食べ物を選択する基準になっていると考えられています。例えば、甘味はエネルギー源になる糖、塩味はミネラル、うま味はたんぱく質を作るアミノ酸です。そして、酸味は腐敗したもの、苦味は毒があることを知るためだとされています。
新生児は生まれてすぐに甘味とうま味はおいしいと感じ、酸味と苦味をいやがります。塩味を好むようになるのは生後4~6カ月くらいです。つまり味覚は、人類が生き伸びるために、進化の過程で獲得した生まれながらの能力なのです。ところが、人はいろいろなものを食べるうちに酸味や苦味を経験して、それをおいしいと感じるようになっていきます。つまり、酸味や苦味は後から備わる「大人の味覚」だといえるのです。

「良薬は口に苦し」? 苦味成分に期待される作用とは?

毒があることを知るために獲得した「苦味」。確かに毒性のある成分には苦いものが多いのは事実です。しかし、苦味成分にはアルカロイド類やテルペン類、ポリフェノール類などがあり、その性質は多種多様。少量であれば体によい働きをするものも多く、まさに「良薬は口に苦し」なのです。
例えば、ふきのとうの苦味成分はクロロゲン酸というポリフェノール類などです。ポリフェノール類には、活性酸素の害を防いで、生活習慣病の予防に働く抗酸化作用があります。

野菜の苦味を楽しんで食生活を豊かに!

野菜の苦味を楽しんで食生活を豊かに!

野菜などの植物が苦味を手に入れたのは、虫や動物などに食べられるのを防ぐためだったと考えられています。ところが人間にとっては、苦味は気分をすっきりさせたり、ストレスをやわらげる作用があるとされています。また、うま味や甘味、塩味など他の味覚と互いに作用し合うことによって、複雑なおいしさを楽しむこともできます。つまり、苦味をおいしいと感じるかどうかには、遺伝子に組み込まれた味覚だけでなく、育った食環境や、精神状態など文化的な要素が大きく影響するのです。
 最近は苦いビールやコーヒーが苦手だという人が増えていると聞きます。これは味覚の経験が不足しているためで、まさに「食わず嫌い」が原因だとも考えられています。「苦味は苦手」という人は、味覚のバリエーションを楽しむためにも、栄養を幅広く摂るためにも、大人の味覚にどんどんトライして、「食わず嫌い」を返上しませんか。まずは、季節の恵み、春野菜のほろ苦さを楽しむことから始めましょう。