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離乳食のバナナガイド|与え方・注意点・簡単レシピを小児栄養学のスペシャリストが徹底解説

離乳食にバナナをどうやって使ったらいいの? 栄養面でも食育の面でも離乳食に最適なバナナについて、適切な開始時期や与え方、適量、おすすめレシピ、さらには冷凍・解凍方法まで小児栄養学の第一人者である上田玲子さんに教えていただきました。

教えてくれたのはこの方

上田玲子さん

上田 玲子(うえだ れいこ)さん

博士(栄養学)、管理栄養士
M.P.H (Master of Public Health)

順天堂大学医学部、東京大学医学部、山梨大学医学部、明星大学人文学部、東洋英和女学院大学人間科学部、白梅学園大学・短期大学等の非常勤講師および帝京科学大学教育人間科学部幼児保育学科教授を経て、現在、(株)トランスコウプ総合研究所 取締役。主な監修書等に『離乳食・幼児食 困ったら読む本!』(総監修・主婦の友社.2024.)、『はじめての離乳食事典』(監修・朝日新聞出版.2023)、『子どもの食生活-第7版-』(編著・ななみ書房.2024) など。

なぜバナナは離乳食に向いている? いつから与えてOK?

バナナが離乳食の定番食材となっている理由は、その消化の良さと食べやすさにあります。生後5~6か月頃の離乳初期から、離乳食として利用できます。

離乳食を始めるとき、最初はつぶしがゆ(米)をスプーン1杯からというのが通常になりますが、だんだんその量を増やしていき、つぶしがゆやすりつぶした野菜に慣れたら、バナナを利用することが多いです。

果物の中では炭水化物が多い食品なので、離乳食スタート時にバナナを加熱してとろとろにした「バナナがゆ」として利用しても問題ありません。

バナナは赤ちゃんにとってうれしい栄養がいっぱい!

バナナを食べる乳児

離乳食を作るとき、バナナはとても手軽でありがたい食品です。乳児でも受け入れやすい甘さがあり、すりつぶしたり加熱したりすることでペースト状になるため、離乳初期から完了期まで使えます。皮をむくだけで調理ができますし、なんといっても常温のまま持ち歩けるので、忙しい保護者にとって非常に便利ですね。

さらに、栄養的にも優れていて、エネルギー源となる炭水化物、離乳食を始めた赤ちゃんに起こりがちな便秘対策にも効果的な食物繊維を含むだけでなく、ビタミンB群(特にビタミンB6)やマグネシウム、カリウムといったミネラルもバランスよく含まれています。

ところで離乳期は、昼と夜のリズムを作っていく大切な時期です。 朝、光を浴びることで分泌される「幸せホルモン(セロトニン)」は、日中の元気のもとになるだけでなく、夜には「睡眠ホルモン(メラトニン)」に変わって自然な眠気を誘います。実はバナナには、このホルモンの材料となるトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物の3つがすべて揃っているでおすすめしたい食品なのです。

また、バナナはアミラーゼという炭水化物の消化に関わる酵素を含んでおり、これも消化を助ける一因となります。

離乳段階別】バナナの与え方、適量、簡単レシピ

【離乳段階別】バナナの与え方と簡単レシピ

まだ歯の生えていない乳児から与えることができるバナナ。離乳段階に応じた与え方や手軽にできるレシピをご紹介します。

離乳初期(生後5~6か月頃)

基本はなめらかなペースト状にします。初期は加熱調理が基本。バナナに含まれるアレルゲンの中には、加熱することで性質が変わり、アレルギー発症のリスクが軽減されるタイプがあるといわれています。

与え方・適量

  • 加熱し、なめらかになるまですりつぶして与えます。
  • 最初はスプーン1杯程度から始めましょう。
  • 慣れてきたら、離乳食のおかず*¹(ビタミン・ミネラル源(野菜・果物))としては5g程度が目安です。
  • 主食として利用する場合は、1/10本~1/9本*²程度が適量です。

*1…離乳食の献立を主食・主菜・副菜とした場合、果物は野菜・果物(副菜)としており目安量が厚労省の『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)』で示されています。
*2…バナナ○本分とあるのは、「バナナ1本=皮をむいた部分(可食部)100g程度」を目安としています。

■簡単レシピ

基本のバナナペースト(加熱バージョン)

材料(1回分)

  • バナナ…1~2cmほどの長さ

  • 水(または白湯)…大さじ1~2 (とろみ調整用)

作り方

  • バナナを5mm厚さの輪切りにする。
  • 耐熱容器にバナナと水を入れ、ふんわりとラップをかけて電子レンジ(600W)で約30~40秒加熱する。
  • 加熱後、すり鉢やブレンダーでなめらかになるまですりつぶす。
  • 水分が足りない場合は、白湯やミルク(調乳済み)を少量加えて、飲み込みやすいとろみに調整して完成。

離乳中期(生後7~8か月頃)

この頃の離乳食は、舌でつぶせるかたさ(絹ごし豆腐くらい)が目安です。バナナは粗くつぶしたり、他の食材と混ぜて食べるのがおすすめです。白身魚、固ゆで卵黄、鶏ささみや葉物類などはパサパサして食べにくいので、バナナのとろみを上手に利用するとよいでしょう。

与え方・適量

  • 舌でつぶせるかたさまで粗くつぶして与えます。
  • 離乳食のおかず*¹(ビタミン・ミネラル源(野菜・果物))として利用する場合の目安は、5~10gです。
  • 主食として利用する場合は、1/3本強~1/2本強*²が適量です。

*1…離乳食の献立を主食・主菜・副菜とした場合、果物は野菜・果物(副菜)としており目安量が厚労省の『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)』で示されています。
*2…バナナ○本分とあるのは、「バナナ1本=皮をむいた部分(可食部)100g程度」を目安としています。

■簡単レシピ

バナナとパンの豆乳煮(パンがゆアレンジ)

材料(1回分)

  • 食パン(耳なし)…1枚(8枚切り)

  • バナナ…1~2cmほどの長さ

  • 豆乳(または牛乳/フォローアップミルク)…30~50ml

作り方

  • 食パンを小さくちぎり、バナナを1cm角程度に細かく切るか、フォークで粗くつぶす。
  • 小鍋に、パン、豆乳、バナナを入れて弱火にかける。
  • バナナを軽くつぶしながら、パンが柔らかくなり、全体がとろっとするまで加熱して完成。

※ヨーグルトが使えるようになったら、「粗つぶしバナナ+プレーンヨーグルト」も手軽でおすすめ。

離乳後期(生後9~11か月頃)

この時期は食べ物をつかんで手でつぶしたり、それをテーブルになすりつけたり、自分で口に入れたりと冒険心いっぱい。でもこれも、ひとりで食べられるようになるための大切なステップです。口に入れられたら「やったね!」とほめて励まして。バナナは手づかみ食べの練習用としてピッタリです。

与え方・適量

  • 歯ぐきでつぶせるかたさのバナナを与えます。
  • 離乳食のおかず*¹(ビタミン・ミネラル源(野菜・果物))として利用する場合の目安は、10gです。
  • 主食として利用する場合は、約0.7本分*²が適量です。

*1…離乳食の献立を主食・主菜・副菜とした場合、果物は野菜・果物(副菜)としており目安量が厚労省の『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)』で示されています。
*2…バナナ○本分とあるのは、「バナナ1本=皮をむいた部分(可食部)100g程度」を目安としています。

■簡単レシピ

手づかみバナナきな粉

材料(1回分)

  • バナナ…3~5cm程度の長さ

  • きな粉…適量

作り方

  • バナナを手づかみしやすいように縦に4~6等分に切る。
  • バナナの表面全体にきな粉を薄くまぶす。

※バナナはつるつる滑りやすいですが、きな粉をまぶすことで手が汚れるのを防ぎ、子どもが持ちやすくなります。きな粉はむせやすいため、薄くまぶすように注意してください。

離乳完了期(1歳頃~)

噛みつぶして食べられるようになりますが、奥歯が生えそろうのは2歳半~3歳。バナナぐらいのかたさを目安にゆっくり噛む練習を。誤嚥(ごえん)や誤飲に気を付けつつ、子どもの食べるペースや好みに合わせて、保護者も一緒に食事を楽しんでみてください。

与え方・適量

  • 歯ぐきで噛めるかたさのバナナを与えます。
  • 離乳食のおかず*¹(ビタミン・ミネラル源(野菜・果物))として利用する場合の目安は、10g~15gです。
  • 主食として利用する場合は、1本+1/3本強*²が適量です。
  • 1歳以降(完了期)は間食(おやつ)を。乳幼児は胃の容量が小さいので食事だけではエネルギーや栄養素が不足しがちです。1日に1~2回、バナナ、ミニおにぎり、牛乳・乳製品などがおすすめ。時間を決め食事に影響しない量を与えましょう。

*1…離乳食の献立を主食・主菜・副菜とした場合、果物は野菜・果物(副菜)としており目安量が厚労省の『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)』で示されています。
*2…バナナ○本分とあるのは、「バナナ1本=皮をむいた部分(可食部)100g程度」を目安としています。

■簡単レシピ

バナナのプチパンケーキ

材料(1回分)

  • バナナ…10~15g

  • 米粉(または小麦粉)…大さじ2

  • 牛乳(または豆乳、水)…大さじ1

作り方

  • ボウルにバナナを入れ、フォークなどで粗くつぶす。
  • 米粉、牛乳を加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜて生地を作る。
  • 熱したフライパンに油をひかず、生地をスプーンですくい、手づかみしやすいお焼きやミニホットケーキ状にする。
  • 弱火で両面を焼き、焼き色がついたら完成。

Point

米粉を使うと、もっちりした食感になり、小麦アレルギーの心配も軽減できます。

離乳食でバナナを与えるときに注意してほしいこと

・食べ過ぎに注意
バナナは甘みがあり、赤ちゃんが好むため、つい与えすぎてしまいがちです。与える量は、月齢ごとの目安量を守り、バランスの取れた食事を心がけましょう。

・誤嚥に注意
バナナは口の中でまとまりやすい一方で、つるっとしていて喉に詰まりやすい側面もあります。月齢に合ったかたさと形状にし、特に後期・完了期でそのままの形を与える場合は、目を離さずに食べる様子を観察しましょう。

・アレルギーに注意
バナナをはじめて与える際は、離乳食用スプーン1杯程度の少量から始めて、食物アレルギーがないかどうか気をつけます。食後に体調に変化がないか観察することが大切です。

・よく熟したバナナを選んで
皮がまだ青いかためのバナナではなく、完熟したバナナを選んでください。バナナは空気に触れると酸化して皮が黒く変色しやすいですが、これは傷んでいるわけではありません。ただし、中身まで真っ黒になってしまったものは与えるのを避けましょう。

離乳食作りに冷凍バナナを活用しましょう

バナナは冷凍保存が可能で、離乳食用に作り置きしておくと便利です。食べやすい形状(離乳初期:ペースト、中期:粗つぶし、後期:カット)に加工してから冷凍します。冷凍する場合は、以下の点に注意してください。

【注意点】
※バナナは空気に触れると黒く変色しやすいため、カットしたらすぐにラップで包むか、ペーストにして製氷皿に入れ、冷凍しましょう。
※完全に凍ったら、におい移り防止のため保存容器やフリーザーバッグに入れて保存してください。
※必ず加熱して解凍し、自然解凍は避けてください。また、一度解凍したものを再冷凍するのは避けましょう。
※2週間以内で使い切りましょう。

【解凍方法】
冷凍したバナナを耐熱容器に取り出し、ラップをかけて電子レンジで加熱して解凍してください。加熱後は、熱すぎないか必ず確認し、必要に応じて白湯やミルク等でとろみを調整します。

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お母さん・お父さんにとってはじめてのお子さんは、はじめての離乳期もドキドキ。とにかく育児書を読んで頑張ってしまうところがあります。食事に手を抜いちゃいけない、ちゃんとおかずを作らなきゃいけないと思っている親御さんが多くて、自分を追い詰めてしまう方が多いんです。そういうとき、バナナはとても利用価値が大きいと私は思います。

バナナは、単に栄養を摂るだけでなく、「おいしさ」「楽しさ」「達成感」という3つのポジティブな感情を赤ちゃんに体感してもらうことができる優秀食材です。まず最大の魅力は、砂糖を使わなくても十分に甘いこと。本能的に「甘い=おいしい=嬉しい」という感覚を経験することで、食べることへのポジティブな思いを体験できます。

特に、おかゆや野菜のペーストなど単調な味が続いて慣れてきた頃は、離乳食の中だるみ期を迎えやすいです。ここで、バナナの甘さが加わることで、食事全体への意欲を高めるきっかけになります。

また、いろいろな食材と組み合わせて、食べ慣れない味や苦手な味・食感をやわらげる役目を果たします。

そして離乳食後期以降は、バナナは手づかみ食べの導入食材として、子どもの「自分でやりたい」という意欲を満たします。

離乳食作りに頑張って疲れてしまったときは、簡単にできるバナナタイムがあってもいいですよね。ちょっと子どもにあげて自分も食べる、親子で楽しんでもいいんじゃないかと思います。ぜひ活用してみてください。

※記事の情報は2025年12月26日時点のものです。