“空気”をとおして暮らしに寄り添うエステーのロングセラー商品「脱臭炭」が、Doleの「もったいないバナナプロジェクト」とコラボ。規格外で捨てられるはずだったバナナが、“炭”として冷蔵庫用脱臭剤に生まれ変わりました。この意外な組み合わせは、どのようにして実現したのでしょうか。開発の背景と工夫、そこに込めた思いをエステー株式会社の商品開発担当の方に伺いました。
お話を伺ったのは…
エステー株式会社 コア事業本部 マーケティング部
M.Hさん
目次
母の知恵が26年続くロングセラーに。愛され続ける「脱臭炭」の原点
――「脱臭炭」は2000年の発売から今年で26年目だそうですね。どうしてこんなに生活者に選ばれ続けていると思いますか?
やはり一番は、お客様に高い脱臭効果を実感していただけているからだと思います。「脱臭炭」は長きにわたり取り組んできた消臭処方技術を活かして開発したゼリー状の炭を使った商品です。
特に多くの方に使っていただいているのが冷蔵庫用で、キムチやにんにく、生ものなど、冷蔵庫の中で発生するイヤなニオイをしっかり脱臭できる点が支持されているのではないかと思います。
それから、この商品の特長のひとつが、「小さくなったら取り替えどき」というわかりやすさです。炭をそのまま使う方法は昔からありましたが、それだと効果の終わりがわかりにくいですよね。「脱臭炭」は、中身が小さくなっていくことで交換のタイミングが一目でわかるようになっているので、効果を実感しやすいんです。発売当時は、そうした点もかなり画期的だったと思います。

――「脱臭炭」は、冷蔵庫や下駄箱など、暮らしの中のささやかなシーンで活躍している存在だと思いますが、商品づくりで最も大切にしているのはどんなことでしょうか?
一番大切にしてきたのは、生活者のニーズをきちんと捉えることです。もともと「脱臭炭」の誕生は、発売当時の担当者のお母様が炭を暮らしの中で使っていたことがきっかけだったと聞いています。昔からある生活の知恵を、もっと使いやすい形にできないか——そこから商品化が始まりました。
商品のラインナップでも、その考え方は大切にしています。たとえばゴミ箱用は、たくさんゴミを入れても邪魔になりにくいよう、薄さと軽さを追求したシートタイプを採用しています。ほかにも、野菜室用や冷凍室用など、置く場所や発生するニオイに合わせて処方や形状を変えています。

「もったいないバナナ」とのコラボで新たな価値を見出す
――今回、Doleの「バナナ炭」を「脱臭炭」の原料に採用することになった経緯を教えてください。
「脱臭炭」の魅力を、これまでとは違う切り口からより多くのお客様に伝える方法を見つけたいという思いがありました。26年続くロングセラーなので、多くの方に使っていただいている一方で、新しい切り口をどう作っていくかという点を課題に感じていました。
例えば、エステーで展開している消臭芳香剤は季節の香りなどをコンセプトにすることで新規性をお楽しみいただけます。でも「脱臭炭」は、ニオイを取る商品なので、消臭芳香剤のように香りのような新規性を広げていくことができません。そうした中で、「脱臭炭」ならではの新しい伝え方ができないかを考えていました。
そこで出会ったのが、ドールさんが取り組む「もったいないバナナプロジェクト」*から生まれた「バナナ炭」でした。意外性のある取り組みであるだけでなく、炭という素材として「脱臭炭」との相性もよく、食品ロスという社会課題にもつながる。新しい切り口として、納得感のある組み合わせだと感じました。
*「もったいないバナナプロジェクト」…中身の味や品質には問題がないのに、規格に合わないなどの理由で商品になれなかったバナナを救う取り組み
▼「もったいないバナナ」「バナナ炭」の詳細はこちら!
――「脱臭炭」に新しい価値をつけたいと考えたのですね。
はい。「脱臭炭」は長く使っていただいているお客様が多い一方で、まだ使用したことがない方にどうやって手に取ってもらうかという課題もありました。
「バナナ炭」とのコラボは、そうした課題を解決するひとつの糸口になるのではないかと感じました。近年、SDGsや食品ロスといった社会課題に対する関心も高まっているかと思いますので、今回のコラボには大きな意味があると感じました。
弊社は日用品メーカーなので、食品ロスという課題には直接関わりにくい部分があります。ただ、今回のようにコラボをすることで、その課題に対して微力ながらお力添えができればと思っています。

――開発にあたって、特に工夫された点や難しかった点はありますか?
まず課題になったのは、「バナナ炭」を使っても「脱臭炭」の効果を担保できるのかという点でした。「バナナ炭」の脱臭効果についてはデータもありましたが、弊社でも改めて試験を行い、十分な効果があることを確認できました。
ただ、商品として販売するとなると、量産したときの安定性が重要になります。炭を粉末にしたときの粒の大きさをどうするのか、バナナの水分の影響はどうか、過酷な環境でも脱臭効果を持続できるのかなど、検証するポイントはたくさんありました。
もうひとつ大きかったのは、社内への理解を広げていくことです。やはり「冷蔵庫用の脱臭剤にバナナ炭」と聞くと驚かれるので、「なぜバナナなのか」というところから説明が必要になります。そこで、「もったいないバナナ」の取り組みや背景を丁寧に説明しながら、社内の理解を得ていきました。
パッケージについてもかなり議論がありました。バナナのビジュアルを入れると特徴は伝わりやすくなりますが、強調しすぎると「バナナの香りがする商品なのか」と誤解されてしまう可能性もあります。そこで、「冷蔵庫用の脱臭剤であること」をしっかり伝えつつ、「もったいないバナナ」の取り組みも理解してもらえるように、デザインや表現を調整していきました。パッケージには、「もったいないバナナ」のストーリーがわかるQRコードも付いています。

炭の可能性と食品ロス削減という社会課題、その両方の視点を届けられたら
――「脱臭炭 冷蔵庫用 バナナ炭」を通じて、生活者の方にどのようなことを伝えていきたいですか?
炭は昔から暮らしの中で使われてきた素材ですが、特に若い方にとっては、炭はバーベキューやキャンプなどで使うものというイメージが強く、日常生活では少し遠い存在になっている部分もあると思います。そういった方たちにも、炭の良さを改めて知っていただきたいという思いがあります。
また、炭は「たった1gでも、穴の表面積を広げるとテニスコート1面分くらいになる」と言われるほど、細かな穴を多く持っています。そしてこの穴がニオイを吸着します。それほど炭は優れた吸着力を持つ素材なんです。そうした炭の特性をきちんと伝えていきたいと思っています。

もうひとつ伝えたいのは、捨てられるはずだったものにも、別の形で役割を持たせられるということです。今回のドールさんとの取り組みを通じて、炭という素材が持つ可能性と、食品ロス削減という社会課題、その両方の視点を生活者の皆さまに届けていけたらと思っています。
――エステーさんにとっての「サステナビリティ」の考え方、向き合い方を教えてください。
弊社は、「くらしと社会を豊かにするウェルネス・カンパニーへ」というメッセージを掲げており、ふふっと笑顔になれる社会を目指していきたいという思いがあります。サステナビリティの考え方としても、生活者の方や取引先の方など、関係するさまざまな方々と一緒に、よりよい世の中をつくっていくことが重要だと考えています。

サステナビリティという言葉自体は広く浸透してきていますが、実際に行動に移すとなると、まだハードルが高いと感じる方も多いと思います。その点、製品を通じた取り組みであれば、生活の中で自然に関わっていただけるのではないかと考えています。今回のような取り組みをその一環として、これからもウェルネス・カンパニーとしての活動の裾野を少しずつ広げていきたいと思います。
※記事の情報は2026年4月15日時点のものです。
