普段は「甘くておいしいフルーツ」として親しんでいるパイナップル。実はその表面には、自然界にも現れる不思議な数字の規則「フィボナッチ数列」が隠れているのをご存じですか? 算数・数学教室「びっくり算数教室」を主宰する齋藤史夫先生、通称“ふみちゃん先生”に、パイナップルと数学をめぐる意外な物語を伺いました。
教えてくれたのはこの方!
齋藤史夫先生
株式会社エデュスパーク代表。「ふみちゃんのびっくり算数教室」を主宰し、“ふみちゃん先生”の愛称で、子どもから大人まで幅広い世代に算数・数学の楽しさを伝えている。工学院大学、國學院大學、東京成徳大学非常勤講師。元東京家政学院大学准教授、元早稲田大学非常勤講師。身近なものから算数・数学の不思議を発見する授業や、オリジナルの「びっくり算数SONG」などを通して、「なんで?」「面白い!」から広がる学びを提案している。
目次
パイナップルを、じっくり見たことありますか?

パイナップルを見ると、ふつうは「甘そう」「おいしそう」などと思うもの。でも、その皮の表面をじっくり眺めてみると、そこには思いがけない“数字の世界”が隠れている……。そう話すのは、ふみちゃん先生こと齋藤史夫先生です。
ふみちゃん先生:
「以前は僕も『おいしそうだな』と思って見るくらいでした。でもここ1年くらいは、パイナップルを見ると、『らせんの数は何本だろう?』と気になって仕方ないんです(笑)。というのも、実はパイナップルの皮の表面には、『フィボナッチ数列』と呼ばれる数字の規則が隠れているんです」
らせんに「フィボナッチ数列」……? なんだか難しそうです。
ふみちゃん先生:
「『数列』というと難しく聞こえますが、要は数字の並びのことです。最初の数を0、次の数字を1として、直前の2つの数字を足した数を次々と並べていきます。つまり、0、1、1、2、3、5、8、13、21……と続いていくんです」

ふみちゃん先生:
「フィボナッチというのは、実は人の名前です。1202年にイタリアの数学者レオナルド・フィボナッチが『算盤の書』という本の中で、ウサギのつがいが増えていく様子を考える問題を通して、この数列を紹介しました。数列自体はそれ以前から知られていたようですが、この本によってヨーロッパで広く知られるようになり、『フィボナッチ数列』と呼ばれるようになったといわれています。
僕が主宰する『びっくり算数教室』では、この数列の仕組みを使った『フィーバー777』という算数の歌を歌っています。足し算を繰り返していくと不思議な数字の並びが現れる、その面白さを歌にしたものなんです」
数字を追ってみると意外とシンプルなこの数列。驚くことに、この数列は自然界にも現れ、そのひとつがパイナップルの皮に見られる“らせん”なのだそう。
ふみちゃん先生:
「パイナップルの表面の鱗片(うろこ状の小さな片)をよく見ると、斜めにつながって、左右それぞれの方向にらせんを描いています。それを数えると、例えばあるパイナップルでは、左(反時計)まわりに8本、右(時計)まわりだと13本のらせんがあらわれることがあります。この8と13は、フィボナッチ数列の中で隣り合う数字。身近な果物にこんな数列が現れるなんて面白いですよね。それで『フィーバー777』の歌詞にも、『パイナップルのらせん、左は8で右13』と盛り込んだんです」
数えてみよう! パイナップルのらせんはいくつ?
先生の言うように、本当にパイナップルの皮にフィボナッチ数列が表れるのでしょうか? 実際にパイナップルを用意して、らせんの数を数えてみましょう。
ふみちゃん先生:
「色マジックで鱗片を線でつないでいくと分かりやすいですよ。一番下か一番上の鱗片にマークをして、そこから同じ向きに線を描きながらたどっていくと、下から上までひとつながりのらせんになります」

その方法で左まわりのらせんの数を数えてみると……。確かに8本! 知識として聞くのとは違い、自分の手で確かめると驚きもひとしおです。

同じように、今度は右まわりのらせんの数を数えてみましょう。果たしてフィボナッチ数列になるのでしょうか。
ふみちゃん先生:
「算数教室でも、本当に5本や8本、13本になると、『ほら、やっぱり!』『よかった!』って(笑)。自然のものだから例外があるかもしれませんが、それも発見。ぜひ、いろいろな大きさのパイナップルで試してみてください」
自然界にあるフィボナッチ数列、いろいろ
ふみちゃん先生によれば、パイナップル以外の植物にもフィボナッチ数列が隠れていると言います。
ふみちゃん先生:
「実はひまわりの種のらせんや松ぼっくりの鱗片が描くらせんの数も、右まわり・左まわりで隣り合うフィボナッチ数列が現れることで知られています」


ふみちゃん先生:
「それから花びらの数にもフィボナッチ数列が例として見られ、桜は5枚、ユリは3枚です」


しかし脳や計算機を持たないはずの植物に、一体なぜこうした数学的な規則が現れるのでしょうか。
ふみちゃん先生:
「植物が進化していく中で、太陽の光をうまく浴びられるよう工夫したのだと僕は考えています。少しずつ位置をずらして葉や鱗片を出すことで、上から見たときに隣り合うもの同士が重なりにくくなり、光を受けやすくなるんですね。実際、植物の葉には隣り合う葉が約137.5度ずつずれて生えるものが多く、この角度を数学の世界では『黄金角』といいます。
フィボナッチ数列の隣り合う数字の比を見てみると、たとえば8÷5は1.6。数が大きくなるにつれて、その比は『黄金比』と呼ばれる約1:1.618の比率に近づいていきます。黄金角も、この黄金比から導かれる角度です。360度の円周を黄金比になるように2つに分けると、小さいほうが約137.5度になります。この角度が『黄金角』です。つまり、フィボナッチ数列の隣り合う数の比は黄金比に近づき、その黄金比から黄金角が生まれるんです」

ふみちゃん先生:
「植物の葉や鱗片の付き方には、自然と一定の規則が生まれています。人間はそれを見つけて、『これは数学で説明できるんじゃないか』と考え、黄金角や黄金比との関係に気づいていったんだと僕は考えています。そう考えると、数学のルーツのひとつは自然の中にある、とも言えると思います」
“新しい世界を見るメガネ”を持つこと
算数や数学というと「テストのための勉強」になりがちですが、ふみちゃん先生が伝えたいのは、その先に広がる面白さだと話します。
ふみちゃん先生:
「以前、学童保育で算数を教えていたんですが、小学1年生から6年生までいるので、みんなが同じように楽しめることって何だろう、と考えたんです。そこで、1ケタの足し算を繰り返すと17段目には「7」が3つ並ぶという『フィーバー777』の歌を取り入れてみたところ、子どもたちがとても楽しんでくれて。みんなびっくりして、探究心に火がつくんですね。子どもだけでなく大人の皆さんも熱中してくれます。親子で『フィーバー777』をやると、ママが計算を間違えても子どもがやさしく直してくれるんです。
算数や数学って、計算するだけのものではないんです。一般的には『理系』と『文系』をきっぱり分けますが、実は算数や数学は自然や芸術にもつながっています。難しそうなフィボナッチ数列も、歌って、実物を見て、数えてみれば、子どもたちの興味はどんどん広がっていきます。教室が終わっても自分たちで計算を続けたり、帰り道でも歌っていたりするんですよ。そして大人の皆さんは、『パイナップルを買って帰ろう!』と言って帰られます(笑)」

ふみちゃん先生:
「僕は最近、野菜やフルーツを見ると何か数学的な規則があるんじゃないかとつい探してしまいます。この前もドラゴンフルーツを見て『これは怪しいぞ』と思って買って帰り、らせんを数えてみました。
算数や数学を知ることは、“新しい世界を見るメガネ”を持つことだと思うんです。それが発見の入り口になり、人と人がつながるきっかけにもなる。だから最近、僕は『1+1とパイナップルは最強!』って言っているんです(笑)」
パイナップルをきっかけに、いつもの景色が少し違って見えてくる……。そんな数学の楽しさを、家庭でも気軽に味わってほしいとふみちゃん先生は話します。
ふみちゃん先生:
「今後パイナップルを買うときは、ぜひ丸のまま買って帰って、線を引いて、らせんを数えてみてください。『フィーバー777』を歌って、足し算もやってみてほしいです。
食卓にパイナップルがひとつあって、家族みんなで『本当に8本?』『こっちは何本?』なんて言いながら数えて、そのあと一緒に食べる。そんな時間があったら、家族の団らんや食卓の豊かさを感じられますよね。パイナップルひとつから、そんな時間が生まれたらいいですね」
※記事の情報は2026年10月27日時点のものです。
