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スポーツは、なぜ人を動かすのか。サッカークラブ「クリアソン新宿」CEOの丸山和大さんが語る、その力とは?

東京・新宿を拠点に、地域に根ざした活動を続けながらJリーグへの参加を目指すサッカークラブ「Criacao Shinjuku(クリアソン新宿)」。競技面での成長を追求するだけでなく、スポーツを通じた社会の活性化や人材育成にも力を注いでいます。今回は、株式会社Criacao(同クラブの運営会社)代表取締役社長 CEOの丸山和大さんに、クラブ運営の背景にある考え方や、スポーツが社会に果たす役割について話を伺いました。


スポーツは、競技としての勝敗だけでなく、地域や人をつなぎ、日常に前向きな変化をもたらす存在です。

そうした営みを支えるもののひとつに、日々のコンディションづくりや健やかな身体を育む「食の力」があります。なかでも「バナナ」は手軽にエネルギー補給ができる果物として、スポーツに取り組む方々にも親しまれてきました。Doleでは、地域のスポーツ活動や大会への提供などを通じて、バナナでスポーツや運動に取り組む人々を幅広く応援しています。

そうした考えのもと注目したのが、地域に根ざした活動を続けながらJリーグ入りを目指すサッカークラブ「クリアソン新宿」です。競技と社会を結びつけるその挑戦から、スポーツの新たな可能性をひも解きます。

お話をしてくれたのはこの
丸山和大さんプロフィール写真

丸山 和大(まるやま かずとも)さん
1984年、神奈川県横浜市生まれ。桐蔭学園高校ではサッカー部に所属し、全国大会に出場。立教大学に進学後も同好会でサッカーに打ち込み、3年次には全国優勝を果たした。大学卒業後は伊藤忠商事に入社し、食品流通部門で活躍。2013年に株式会社Criacaoを創業し、代表取締役社長 CEOに就任した。現在、サッカークラブ「クリアソン新宿」の運営をはじめ、企業・大学などへの教育支援などの事業を展開している。

不確実性、再現性の低さが生み出すスポーツの価値

──スポーツはこれまで、競技や勝敗といった側面を中心に語られることが多くありましたが、近年ではそのあり方にも注目が集まっています。丸山さんは、サッカークラブの運営やサッカーを通じた企業活動を通じて、社会課題の解決に取り組んでこられました。そうした活動の中で感じている「スポーツの価値」とは何でしょうか。

スポーツの価値は、「不確実性」「再現性の低さ」にあると考えています。現代はAIやテクノロジーの進化により、さまざまな分野で再現性を高めることが可能になりました。それは非常に便利なことであり、今後も不可逆的に広がっていく可能性が高いと考えています。

一方で、スポーツはそれらと正反対の性質を持っています。サッカーで例えるなら、「ミスが起こる」からこそ面白いという点です。サッカーは、脳から最も遠い位置にある足を使い、さらに向き合う対戦相手がいて、ピッチコンディションなどの環境も変化します。こうした複数の要素が複雑に絡み合うために再現性が低く、同じことは二度と起こりません。

その中で個人やチームとして勝敗を競い、それを多くの人が共有し、感情を分かち合います。このような体験は、AIで代替ができないものです。AI時代になったからこそ、不確実で再現性が低いスポーツの価値は、より高まっていると感じています。

丸山和大さん

──スポーツには、プレーする側面だけでなく、観客として応援する側面もあります。特に応援する体験という観点から、スポーツは人や社会にどのような影響をもたらしているとお考えですか?

個人にもたらす影響として、選手に自分を重ね合わせる「感情移入」の役割があると思います。私自身も、大谷翔平選手に感情移入することがあります。自分ではなし得ないことを代わりに体現してくれる存在であり、できなかった悔しさを慰めてくれる存在でもあります。

もう一つは、人と人をつなぐコミュニティとしての役割です。仲間と一緒に成功や失敗、喜びや悔しさを共有することで、自分の感情を整理したり、前向きになれたりすることがあります。時には意見の対立が生まれたりもしますが、そうした人間模様も含めて、人と人をつなげる力もあると感じています。

──スタジアムでは観客同士の一体感が生まれますし、最近はパブリックビューイングも盛んです。試合を一緒に観戦して喜んだり、悔しがったりするといった体験は、感情を共有する特別な時間になりますね。

さらに視野を広げると、社会や地域、国レベルでも大きな影響力を持ちます。例えば、地元の高校が甲子園に出場すれば、学校だけでなく地域全体が盛り上がりますし、国際大会で日本代表が勝利することで、国民全体の誇りや活力につながることもあります。

新宿を拠点に地域と共に歩むサッカークラブ

──丸山さんはJリーグの空白地である東京23区内にサッカークラブ「クリアソン新宿」を創設されました。東京・新宿に拠点を置いた理由を教えてください。

起業の起点は「なぜ東京23区にサッカークラブがないのか」という疑問でした。1993年に発足したJリーグは、「Jリーグ百年構想」のもと、地域に根ざしたスポーツクラブづくりを進め、現在は42都道府県に広がっています。一方で、東京の中心部である23区にはJリーグのクラブが存在していません。

ヨーロッパでは都市の中に複数のクラブが存在し、トップクラスは、1,000億円規模に達するクラブもあります。サッカーが社会や人に多くの影響を与えるのであれば、23区内に複数のクラブが存在してもいいと考えました。

その中で新宿を選んだ理由は、新宿区の持つ多様性にあります。新宿には約135カ国・地域出身の4万人を超える外国人が暮らし、歌舞伎町を中心に多くの観光客が訪れます。その一方で、日本を代表する企業やデパートがあり、歴史的な産業も受け継がれています。「スポーツの価値を通じて、真の豊かさを創造し続ける存在でありたい」という経営理念と密接につながっていると感じました。

©Criacao 2026
©Criacao 2026
クリアソン新宿は2022年以降、毎年国立競技場でホームゲームを開催。いずれの試合も来場者数は1万人超を記録している

──「クリアソン新宿」の特徴として、地域を活性化する活動を積極的に行っている点が挙げられます。新宿区と包括連携協定を締結し、スポーツ振興にとどまらず、地域社会の発展、多文化共生の推進などでも連携しています。スポーツクラブは、地域社会の中でどのような存在になるべきだとお考えですか?

選手たちはさまざまなイベントを企画・運営し、学校、町会・商店会、高齢者施設、企業、スポーツ団体などの方々と、新宿の活性化に取り組んでいます。その件数は年間300件以上にのぼり、2026年は500件を目標としています。

「なぜやるのか?」と問われれば、「地域のインフラ」のような存在になりたいからというのが答えです。サッカーは男女問わず誰でも参加でき、言語を超えて楽しめるスポーツです。サッカーが好きな人はもちろん、関心がない人にも価値を提供できる可能性があります。そんなサッカーを通じて地域と接点を持ち、地域に貢献していきたいと思って活動しています。

──そのために、商店街のイベントを手伝ったり、地域のお祭りで荷物を運んだりと、一見サッカーとは関係ないことにも積極的に取り組まれているのですね。

創設当初は実績もなく、「お節介」からのスタートでした。単純に「チームを応援してください」と呼びかけるだけでは、サッカーが好きな人にしか声は届きません。私が目指しているのは、サッカーに関心がない人にもその価値を知ってもらうことです。そのために、地域のみなさんの困りごとに耳を傾け、課題解決のお役に立ちたいと考えています。

具体的には、商店街のイベントで集客のためにサッカー教室を開催したり、お祭りで人手が足りない場合にはお手伝いをしたりしています。そうした積み重ねによって「サッカークラブはこんなこともしてくれるのか」と感じてもらうことで、街の方々にとって身近な存在になりたいと考えています。

©Criacao 2026
©Criacao 2026

スポーツ人材をリーダー人材に

──丸山さんが経営する株式会社Criacaoでは、サッカークラブの運営と並行して、人材育成事業にも力を入れています。トップアスリートの経験を生かした社会人向けの研修や講演、リーダー研修などを展開する中で、「スポーツ人材をリーダー人材に」というメッセージを発信されています。その背景にはどのような考えがあるのでしょうか。

一つは、自身の原体験です。私は大学時代にサッカー愛好会に所属し、3年次にリーダーを務めました。70人ほどの組織を任されたのですが、日本一を目指す中で思いが空回りし、多くのメンバーを傷つけてしまいました。その一方で、仲間の支えを受けて日本一を達成し、技術の優劣を飛び越えて喜びを分かち合う経験もしました。

──高校時代は強豪校で全国大会に出場した丸山さんにとって、初めての挫折と喜びの体験だったのですね。

高校時代は周囲がサッカーエリートばかりでしたから、「上手くなければ価値がない」と思い込んでいたり、勝つために相手を押しのけるような気持ちになっていたりしました。競技者としては必要な側面もありますが、人間としては未熟でした。大学時代のリーダー経験を通じて、リーダーのあり方が人の人生に大きな影響を与えることを痛感し、リーダー人材の重要性を学びました。

──なるほど。

もう一つは、サッカー競技そのものがリーダーシップを育むのに最適であることです。サッカーは11人でプレーする競技ですが、選手一人ひとりが味方と相手の動き、審判やピッチの状況を把握し、瞬時に判断して行動する必要があります。つまり、全員がリーダーシップを発揮し、最適解を見つけることが求められるわけです。

──スポーツの経験は、なぜ人を成長させると考えますか。

スポーツにはミスが伴うからだと考えます。そのため、仲間を思いやる力が自然と養われますし、世界中で親しまれているスポーツを通じて、グローバルな視点も身につきます。

時代がどれだけ変わろうとも、人間社会がチームで成り立つ構造は変わりません。そこには必ずリーダーが必要です。私は優れたリーダーを増やすことが人間の幸せにつながると考え、スポーツの力を生かした人材育成に取り組んでいます。

──丸山さんがクリアソン新宿の選手に求める姿勢を教えてください。

選手には、サッカーだけでなく、社会でも活躍できる人材になってほしいと伝えています。起業時に考えたのは、アスリートのセカンドキャリア問題です。引退を考える選手は「スポーツしかやってこなかった」とネガティブに捉えてしまいますが、それは専門分野で努力を続けてきた証拠であり、第一線で活躍する企業でのキャリアにも引けを取らない、誇るべき経験です。

だからこそ、セカンドキャリアでは社会との接点を持ち、スポーツの経験を言語化して伝えられる力を身につけてほしいと考えています。地域活動を通じて多くの人と関わることで社会性が高まり、自分の言葉で価値を伝えられるようになります。将来的には、プロアスリートの道を、誰もが安心して選べる社会を実現していければと考えています。

©Criacao 2026
©Criacao 2026

企業とスポーツの共創関係

──近年、企業とスポーツの関わり方も多様化してきているように感じます。Doleでは、スポーツイベントへのバナナ提供など、「食」を通じてスポーツを応援する取り組みを行っています。こうした動きも広がるなか、企業がスポーツに関わることで、どんな良い変化や価値が生まれると思いますか。

企業とスポーツは、相互に作用しながら成長していく関係にあると考えています。スポーツチームは、応援してくださる企業に対して、社員の一体感や感動体験を提供できます。それによって企業内で人と人とのつながりが強くなり、日々の企業活動にも良い影響が生まれます。これは、通常の業務だけでは得がたい価値です。

一方で、スポーツチームは企業の支援がなければ成り立ちません。スポーツを持続可能なものにしていくためには、多くの企業の力が不可欠です。

──企業にとっては、スポーツを通じたブランド価値の向上も期待できますね。

その通りです。新宿という地域から世界一のサッカークラブをつくる、その挑戦を共にすることでパートナー企業のブランド価値が向上する、そういう姿を目指しています。

人間らしさを問い続けるスポーツの未来

──最後に、スポーツがある社会は、これからどのような未来に向かっていくとお考えですか。

スポーツは、「人間とは何か」の問いに向き合う存在になっていくのではないでしょうか。スポーツの語源はラテン語の「deportare(運び去る)」に由来し、日常から離れて楽しむという意味から生まれたとされています。衣食住のように生きるために必須ではありませんが、人間にとっては本能に近い領域に関わるもので、自然と身体が動いてしまうものです。

AIが進化する時代において、不確実で感情を伴うスポーツの体験は、人間らしさを考えるうえでますます重要になるでしょう。失敗や思いやり、支え合いといった人間が大切にしてきた価値がすべて詰まっているスポーツは、今後も社会に不可欠な存在として、人や社会を豊かにし続けていくと思います。

丸山和大さん

※記事の情報は2026年6月9日時点のものです。